「味の素」「大塚製薬」は慎重、「ハウス食品」「ニチレイフーズ」はどうする? プライベートブランド黄金時代にメーカーの課題

執筆者:白鳥和生 2025年7月23日
プライベートブランド市場が拡大する中、メーカー各社は「分水嶺」に立たされている[イトーヨーカドー大森店の売り場に並んだPB商品「セブン・ザ・プライス」](C)時事
プライベートブランド(PB)が隆盛を迎える中、製造を請け負うメーカーは看過できない課題に直面する。小売主導で製造スペックなどが決まり商品企画で主導権を失えば、「作るだけ」の存在に近づきかねない。メーカーのナショナルブランド(NB)は営業利益率が10%を超える商品もあるが、PBの場合は5%未満にとどまるケースが多い。メーカーの研究開発や技術投資が減退し、長期的には業界全体のイノベーションが停滞する恐れもある。

 プライベートブランド(PB)の存在感が、今、食品や生活用品市場でかつてないほど高まっている。かつてPBは、ナショナルブランド(NB)製品の廉価な代替品にすぎないとみなされていた。しかし、物価高と実質賃金の低迷が続く2020年代半ば、PBはその役割と位置づけを大きく変貌させている。

 PBはスーパーマーケットなどの小売業が企画・販売する商品。一方、NBは食品・日用品メーカーが自社のブランド名で展開する商品を指す。販売額に占めるPB比率が4割を超える商品群(たとえば冷凍食品、調味料など)もある。PBは単なる「安かろう」ではなく、「価値に見合う価格」「納得できる品質」という視点で選ばれる“ブランド”として消費者に評価されるようになった。

 背景には、消費者心理の変化がある。安さだけを追い求めるのではなく、「この品質でこの価格ならば納得できる」と感じられるかどうか──いわば“価格納得感”が購買判断の新たな物差しとなっている。2025年6月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比3.3%の上昇を記録し、コメ価格は約10割上昇するなど、生活必需品へのインフレ圧力は顕著だ。

 節約志向が強まりつつも、生活の質を下げずにやりくりしたいという欲求が強まっている。そうしたニーズに的確に応えているのが、現代のPBである。

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カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
白鳥和生(しろとりかずお) 1967年、長野県生まれ。明治学院大学国際学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。小売、卸、外食、食品業界などを長く担当する。2024年より流通科学大学商学部経営学科教授。著書に、『即! ビジネスで使える新聞記者式伝わる文章術』(CCCメディアハウス)、『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』、『グミがわかればヒットの法則がわかる』(ともにプレジデント社)など多数。
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