「消費増税解散」は近いか、遠いか

執筆者:Foresight2012年7月11日

「国会があなたたちのせいで止まっていることは分かっているんでしょうね。民主党のせいで国が潰れてしまったら、どうするつもりなんだ」
 7月2日夕、自民党の岸田文雄国会対策委員長は憤懣やるかたない様子で携帯電話を握りしめ、電話の相手の城島光力・民主党国会対策委員長に怒りをぶつけた。岸田氏が憤慨しているのは、小沢一郎氏ら民主党議員が衆院本会議での消費税増税法案の採決で造反したことに伴う民主党の内紛が尾を引き、この日も国会審議が事実上ストップしていたからである。

遅れたスケジュール

10日午前、参院予算委員会で頭をかく野田佳彦首相 (C)時事
10日午前、参院予算委員会で頭をかく野田佳彦首相 (C)時事

 せっかく民主、自民、公明3党の修正合意によって消費税増税を目玉とする「社会保障と税の一体改革法案」が6月26日に衆院を通過したにもかかわらず、この時点では参院で審議が始まるメドも立っていなかった。通常の法案なら即日、参院に送付され、すぐに委員会審議が始まる手順になるはずである。  結局、参院に一体改革法案を審議するための特別委員会がようやく設置されたのは7月6日だった。実質的な審議が始まるのは18日以降となりそうだという。普通の手続きなら6月末には審議が始まっていたはずだから、この法案は通常より約20日間も処理が遅れていることになる。  当然、こうした審議の遅れは政局にも重大な影響を及ぼす。  今国会は、他にも特例公債法案や選挙制度改革関連法案などの重要法案が積み残されている。自民党の茂木敏充政調会長は民主党の内紛について、「あんなことがなければ7月中には消費税増税法案は成立していた」と迷惑顔だが、茂木氏の言う通り7月中に成立すれば、9月8日の会期末までの1カ月あまりで特例公債法案を処理し、残る選挙制度改革法案の審議をどこまで深められるかというぐらいの進み具合となっただろう。  だが、今の状況では、消費税増税法案の成立は早くとも8月上旬になり、何らかのハプニングがあれば8月後半にずれ込む可能性もある。こうなってくると、特例公債法案の処理と選挙制度改革法案の処理は間に合うかどうか微妙になる。それらの仕上がり具合が会期末の与野党の駆け引きにも影響し、内閣不信任決議案提出や衆院解散・総選挙をにらんだ政局の焦点に浮上してくる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。