7月19日に北京の人民大会堂で開かれた「中国アフリカ協力フォーラム」の第5回閣僚級会議で、中国の胡錦濤国家主席は今後3年間で総額200億ドルの融資をアフリカに供与すると表明し、日米欧などのドナーを驚かせた。
 2008年5月に日本政府が横浜で開催した「第4回アフリカ開発会議(TICAD4)」で、福田康夫首相(当時)が2012年までの4年間で供与を約束した円借款総額は40億ドルだった。今回の中国の援助がいかに巨額であるかが分かる。
 2011年版の『中国対外援助白書』を見ると、2009年までの中国の対外援助総額約2563億元(累計、約3兆1000億円)のうち、アフリカ向け援助は45.7%を占め、世界の地域別では「アジア向け」を凌いで最も多かった。中国がアフリカ支援にかける意気込みの強さがうかがえる。

透明性を欠く中国のアフリカ援助

 中国のアフリカ援助は、旧宗主国としてアフリカと深い関係を築いてきた欧州勢から、しばしば「新植民地主義」「汚職の温床」などと批判されている。債務危機で青息吐息の欧州の負け惜しみと見る向きもあるが、中国のアフリカ援助が抱える最大の問題は、やはり透明性だろう。
 周知の通り、中国は「内政不干渉」を援助の一大原則に掲げる。したがって、日米欧の基準では援助対象になり得ないような、ガバナンスに問題のある国に対しても、堂々と援助を供与する。その結果、公的な援助資金が適正に管理されているかについての疑念をどうしても拭い去ることが出来ない。
 中国の援助の仕組みは複雑である。援助の実施機関が複数の政府部門・政府系組織にまたがっており、2011年2月に「部門間協調機構」という調整機関が新たに設立されたほどだが、概観すると次のようになっている。
 政府内で対外援助業務を所管しているのは、国務院の商務部(商務省)対外援助司だ。対外援助司は主に技術協力を含む「無償援助」と「無利子借款」を担当している。
 商務部は国家経済貿易委員会と対外貿易経済協力部が2003年に統合されて発足した省庁で、部内(省内)には投資合作司、国際経済貿易関係司など投資・貿易関連の業務を統括する部署も存在する。日本で言えば経済産業省がODA(政府開発援助)関連業務を統括しているようなものであり、中国の対外援助の商業的性格を強く感じさせる。
「無償援助」と「無利子借款」以外には、低利で相手国に資金を貸し出す「優遇借款」という援助がある。これは商務部から利子補填を受けた中国輸出入銀行が貸し出し業務を担当している。
 このほかに、中国国家開発銀行が出資している「中国アフリカ開発基金」という援助の枠組みもある。同行はこれとは別に、アフリカで事業展開する中国企業向けに外貨建ての融資も実施している。さらには、地方政府(省政府)が北京の中央政府の頭越しに、独自にアフリカ向けに実施している援助もある。
 筆者が知る中国専門家の1人は、中国の援助の特質について「援助と援助以外の資金の境目が曖昧になっている」と指摘する。日米欧のドナーであれば「企業の投資」として分類されている資金の流れが、あたかも「援助」であるかのように扱われている。「結局は中国企業を儲けさせているだけではないか」という疑念を招きやすい所以である。

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