尖閣国有化のタイミングは正しかったか

執筆者:野嶋剛2012年9月17日

 ここ数日、中国メディアの知人から日中関係についてのコメントや分析について聞かれることが多かった。その際、先方にも反日デモについての見方を聞いてみたのだが、返ってくる答えのなかに、必ずと言っていいほど、「なぜ釣魚島の国有化の決定がこれほど最悪のタイミングに行われたのか理解できない」という一言が含まれていたことが印象に残った。

 デモの破壊行動の是非は論じるまでもないが、この点については、私も似たような感想を持たないわけではない。

 胡錦濤国家主席が野田首相にAPECで「警告」を発したのが9月9日。

 尖閣諸島の国有化の決定は9月11日。

 柳条湖事件(918事変)の日として中国全土で最も反日的気分が盛り上がるのが9月18日。

 そして、日中国交正常化40周年の記念日として多くの祝賀イベントが予定されていたのが9月29日。実際にはその前の週からイベントがスタートしている。

 共産党大会は10月中旬に開かれる見通しとなっている。

 こうしたスケジュールが目の前に置かれたとき、論理的には、しばらく国有化を延ばすことで胡錦濤のメンツを立て、9月18日をなんとか穏便にしのいで、9月29日にそれなりに良好な雰囲気を盛り上げ、中国の指導者にとってはきわめて重要な党大会の方向性が固まったころを見計らって、国有化を発表すればいいのではないか、という計算は誰でも思いつくところだろう。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。