「強硬姿勢に転じた中国」と「戦略なき日本」

執筆者:柳澤協二2012年10月1日

 先月末、北京で開かれた「日中国交回復40周年シンポジウム」に参加した。折から、尖閣問題に多くの議論が集中していた。2010年の漁船衝突事件以来、私は毎年北京を訪問して、社会科学院などと意見交換を行なっているが、今年の中国は、明らかに違った。

 一言で言えば、尖閣問題は、昨年まで、棚上げを前提とした危機管理の問題だった。今年は、危機管理という状況対応的な様相ではなく、むしろ数年のうちに決着を図ろうという強い意図が感じられる中国側の姿勢であった。北京のシンクタンクは、「日本の主張を覆す」歴史的資料を蒐集・分析しているとも言っていた。

 中国側の非難の中心は、日本による国有化という「行動」と併せて、「領土問題は存在しない」という頑なな「態度」が、国交回復時の「棚上げ合意」に反しているというものだ。つまり、日本の姿勢が「問答無用」に転じたと解釈し、中国も棚上げから攻勢に転じるという論理だ。

 国有化について、政府は、都による買収を阻止するためのやむを得ない措置として中国側に説明し、北京の指導部も、それを理解していたと思う。むしろ、国有化の一方で、たとえ水面下でも、尖閣に関して何らかの交渉の場を作ることが北京の要望だったと、私は考えている。例えば、上述の歴史的資料が中国側にあるのなら、共同研究を受けて立つのも一つの知恵だ。

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