復興予算「流用」のために潜り込ませた文言

執筆者:原英史2012年10月23日

 数年前、建築基準法、貸金業法、金融商品取引法などの規制・運用強化が問題になった頃、「コンプライアンス不況」とか「官製不況」という言葉がよく使われた。最近は一時ほど目にしないようだが、実態として、こうした問題は収まるどころか、ますます拡大するばかりだ。

 例えば、民主党政権になってからの労働者派遣規制の強化、電力システムの展望を示さないまま矛盾だらけの「原発ゼロ」を唱える様などが、その例であろう。

 国の政策が、我が国経済の成長を妨げる状況が続いている。

 国会とマスコミでは、「復興予算の流用」問題が今頃になって注目されているが、これは、いわば、「国が復興を妨げている」問題とも言える。

 2011年度から5年間で19兆円の復興特別会計予算のうち、10.5兆円は復興増税。苦しい経済情勢の中、「復興のため」と称して増税で民間資金を吸い上げながら、これを「シーシェパード対策」や「役所の耐震改修工事」など、復興と無縁の事業につぎこんでいるのだから、「官製復興妨害」というよりほかない。

 この問題は、もともと、昨年6月に成立した「東日本大震災復興基本法」の第2条で、基本理念として「単なる災害復旧にとどまらない活力ある日本の再生を視野に入れた抜本的な対策」という文言を潜り込ませたところから発した。

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