前回、栗山尚一元駐米大使夫人の昌子さんがワシントンで取り組んだ文化活動を紹介した。実は大使夫人たちの中には任地で築いた人脈を生かし、夫が外務省を退職した後も、第3世界の国々や途上国の子供や貧しい人たちへの支援に取り組んでいる人も少なくない。アジアとアフリカの支援に携わる2人を紹介しよう。

 フィリピンの学生を支援する角谷さん(「日比パガサの会」提供)
フィリピンの学生を支援する角谷さん(「日比パガサの会」提供)

 角谷允子(まさこ)さん(78)がフィリピンのストリートチルドレンの就学支援を目的に、友人らと「日比パガサの会」を立ち上げ、代表に就いたのは1989年10月。夫の清氏が3年余の駐比大使を終え、帰国して1年半後のことだ。パガサとはタガログ語で希望を意味する。

 フィリピン滞在中、角谷さんは大使夫人として多くのチャリティー活動に参加したが、北部の都市バギオで日系フィリピン子弟の地位向上に携わっていたシスター海野(うんの)の支援もその1つだった。

 フィリピン人女性と日本人男性の間に生まれた日系の子供たちが恵まれない環境に置かれている中、シスターはフィリピン人の母親とその子たちが自活できるようにするため奔走していた。角谷さんは友人らとチャリティー演奏会やバザーなどを開き支援した。シスターはその後、この活動について角谷さんに後事を託してガンで亡くなった。

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