アルジェリア東部の天然ガス関連施設で日本人を含む多数の外国人が人質となった事件は、本稿執筆時点(日本時間1月18日未明)でアルジェリア軍による救出作戦が終了したとの情報があるが、人質の安否については明確な情報がない。

 事態は刻々と動いており、不確定要素があまりにも多いが、本稿ではアルジェリア南部を中心とするサヘル地域(サハラ砂漠南縁部の半乾燥地帯)で、イスラム過激主義を掲げる武装集団が勢力を拡大し、今回の事件を起こした理由を考えてみたい。

 キーワードは「身代金」と「コカイン取引」だ。

 

首謀者「ベルモフタール」

 武装集団のリーダー、ベルモフタールと見られる人物 (C)AFP=時事
武装集団のリーダー、ベルモフタールと見られる人物 (C)AFP=時事

 各種報道によれば、犯行声明を出した武装集団のリーダーはモクタール・ベルモフタール(Mokhtar Belmokhtar)だという。報道が正しいとすれば、これはアルジェリアで誕生し、現在はマリ北部の実効支配に深く関与しているアルカイダ系テロ組織「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織(AQIM)」の元ナンバー2だった男だと思われる。AQIM誕生の経緯、マリ北部への関与については筆者が以前、フォーサイトに書いた次の記事などをご参照いただきたい(2012年10月30日付「大統領選後のアメリカ外交の隠れた焦点~西アフリカへの軍事的関与」、2012年3月23日付「マリのクーデターの衝撃」)。

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