欧州技術の黄昏? 新型特急発進せず

執筆者:国末憲人2013年2月13日
 トラブル続きで1カ月あまりで運行停止となったフィーラ(写真は国内特急。筆者撮影)
トラブル続きで1カ月あまりで運行停止となったフィーラ(写真は国内特急。筆者撮影)

 少し大げさかも知れないが、欧州の技術崩壊を象徴している出来事、と受け止める向きもあるようだ。オランダ高速鉄道(NS Hispeed)とベルギー国鉄(SNCB)が共同で導入した両首都間の新型特急「フィーラ」(Fyra)を巡るてんまつである。

 隣接する両国は結束性が強く、ルクセンブルクを含めて「ベネルクス三国」と呼ばれてきた。ただ、互いの行き来は、微妙な距離感があって予想以上に面倒だ。飛行機だと近すぎるし、列車だと意外に遠い。

 欧州連合(EU)が本拠を置くベルギーの首都ブリュッセルからオランダの各都市に行くには、フランス国鉄(SNCF)主導で運行されているTGV型の超特急「タリス」に乗るのが普通だった。ただ、パリとブリュッセルを行き来するEU官僚やビジネスマンを主な顧客に想定するタリスにとって、ブリュッセルから先は単なるおまけ。高い割に時間がかかり、一般客には不評だった。そこで、アムステルダムとブリュッセルを直接結ぶ新型特急の導入企画が持ち上がり、オランダ、ベルギー双方がイタリアのアンサルドブレーダ社に19本の列車を約4億ユーロで発注した。予定より5年ほど遅れて製造された9本の列車を使って、「フィーラ」と名付けられたV250系新型特急が昨年12月9日、華々しくデビュー。両首都間の運行を開始した。

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