演算能力毎秒三十六兆回と日本が世界最速を誇ってきたスーパーコンピューター「地球シミュレータ」が、米IBM製の「ブルージーン/L」にトップを譲った。能力の差はわずかだが、「いずれ抜かれることはわかりきっていた」と、地球シミュレータの開発・製造を手がけたNECの幹部はこぼす。 軍事目的からスーパーコン開発を進めてきた米国では、日本勢がそれまでの倍近い性能で記録を更新した際、「旧ソ連のスプートニク以来の衝撃」として「打倒・地球シミュレータ」の動きが起こった。国家安全保障を揺るがしかねない問題と捉えられたからだ。 一方、日本では「文部科学省や経済産業省などの縄張り争いに加えて、科学振興に理解のある国会議員がいない」(大手電機首脳)ため、国家規模でのスーパーコン開発推進は遅れている。文部科学省が毎秒一千兆回演算できる試作機の開発予算を二〇〇六年度までに十億円つけたが、国内のIT各社からは「地球シミュレータの四十分の一、米国の百分の一の予算では、さしたる効果も期待できない」との声も漏れてくる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。