グレートゲームが始まった。

 就任後初の訪米で、環太平洋連携協定(TPP)への参加は「聖域なき関税撤廃」を前提とはしないという言質をオバマ大統領から得た安倍晋三首相は、満を持して交渉入りを宣言した。アベノミクスの「3本の矢」のひとつ「成長戦略」に深く関わる通商戦略となる。

 同時に、TPPは中国をめぐってのアメリカのグレートゲーム(大戦略)の一環をなしていることも忘れてはならない。安倍首相訪米直後の米紙「ニューヨーク・タイムズ(NYT)」に掲載された寄稿が、そのことを明確にしている。筆者は政治リスク分析で知られる米コンサルタント会社ユーラシア・グループを率いるイアン・ブレマーと同社の研究部長デビッド・ゴードン(元国務省政策立案部長)だ。【Two Key Foreign Policy Openings for Obama, NYT, Feb. 25】

 

中国とロシアを東西から包囲

「TPPは国家資本主義の伸張を抑え込み、アメリカの影響力を太平洋圏に広げるのに役立つ」。それは冷戦後、今日の欧州連合(EU=当時はEC、欧州共同体)への参加を期待して、東欧諸国が改革を進めていったのと似た力を持つのだという。「影響力を増す中国の国家資本主義の陰で身動きできなくなるかもしれない」地域に、より自由な通商と投資の世界を広げて、アメリカの繁栄を取り戻していく。そこに世界第3の経済大国日本が加わるのは必須なのだ。

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