米軍が手を焼くイラン情報機関の秘密工作

執筆者:春名幹男2005年2月号

 イラク国民議会選挙の舞台裏でイランとアメリカの情報戦争が激しさを増している。イラン情報機関の秘密工作は巧妙で、イラクに親イランのイスラム教シーア派国家を造るという戦略的目標は前進しているようだ。 イランの情報機関といえばSAVAK(国家治安情報機関の意味)が知られている。SAVAKは、一九五三年のモサデク政権打倒クーデターで復権したパーレビ国王が米中央情報局(CIA)とイスラエル情報機関の支援を得て、五七年に創設した。反体制派勢力の監視、人権抑圧で知られる。SAVAK要員は一万五千人以上、情報提供者は数千人に上ったという。 七九年のイラン革命で成立した聖職者独裁体制下で情報機関は再編され、SAVAKは国家情報治安機関(SAVAMA)、さらに現在では情報治安省(VEVAK)と名を変えた。 革命でSAVAKの幹部六十一人が処刑された。だが、イラン国内左翼勢力や仇敵フセイン元イラク大統領与党のバース党の党内情勢に関して専門知識を持つSAVAKの元中堅機関員は、いったん追放された後、復職を認められ、現在VEVAKで“活躍”している。「イランは世界で最も活発なテロ支援国」(全米科学者連盟=FAS)とみられている。FASの集計によると、七九年のイスラム革命以来、イランは二百件以上のテロに関与、千人以上を殺害した。その中には、八三年のレバノン・ベイルートの米海兵隊司令部爆破事件、九六年のサウジアラビア・ダーランの米空軍宿舎爆破事件も含まれている。イランはホメイニ師の教えに従い「イスラム革命の輸出」を進めてきたのである。

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