憲法の改正論議が党利党略や因縁対立に翻弄されている。国の骨格・憲法を論じるには、あまりに矮小な政治家たち――。「与謝野(馨・政調会長)が暗躍しておる。草案を大勲位(中曽根康弘元首相)に書かせるつもりだ」 昨年十二月中旬、山崎拓首相補佐官は小泉純一郎首相への電話で、憲法改正問題を巡る党内の情勢を一気にまくし立てた。自民党で憲法改正問題を検討していた“子飼い”の保岡興治・憲法調査会長や中谷元・憲法起草委員長が外されかかったためだ。郵政民営化以外の問題となると極端に腰が引ける小泉首相は、聞き役に回るしかなかった。 山崎氏の「焦り」の裏には、保岡、中谷両氏の不手際があった。自民党は一月の党大会で新憲法草案を了承する予定だったが、保岡氏らが昨年十一月まとめた案に「参議院議員の直接選挙廃止」や「参議院からの閣僚は議員を辞職」など衆議院の優位性を盛り込んだことに対して、青木幹雄参院議員会長らが猛反発。この根回し不足に加えて、中谷氏の依頼を受けて陸上自衛隊の幹部が改憲案を独自に作っていたことも発覚し、両氏は窮地に陥ったのである。 このため、与謝野氏は保岡案を廃案にして党大会前の策定期限を先送りし、新たに新憲法制定推進本部(本部長・小泉首相)を設ける「仕切り直し」をした。同本部に新憲法起草委員会を置いて委員長に青木氏と近い森喜朗前首相を据え、事務総長には与謝野氏自身が納まった。

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