どす黒い肌の表面にブツブツの毛穴が見えるウクライナのビクトル・ユーシェンコ大統領の顔。正視できないほどのその顔に底深い秘密が潜んでいる、と思えてならない。 大統領がダイオキシンの毒を盛られたのは昨年九月五日のこと。場所は、ウクライナ情報機関、国家保安局(SBU)幹部の別荘。ユーシェンコ氏はイーゴリ・スメシュコ長官らに、SBUが選挙に介入しないよう申し入れたと伝えられている。食事にはすしなどが出され、その晩、ユーシェンコ氏は激しい頭痛、腹痛を訴えた。チャーター機でウィーンの病院に搬送され、緊急治療を受けて助かり、後遺症を押して、選挙戦を戦うことができた。 それだけ聞けば、犯人はSBUに違いないと思ってしまう。SBUは旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後身で、約三万八千人もの要員を抱え、今もKGBと同様、特殊工作の任務から法執行の権限まで、幅広い能力と権力を維持しているのだ。 だが、事実はそれほど単純ではなさそうだ。“オレンジ革命”を成功させ、再選挙でユーシェンコ氏を当選させた陰の功労者は、実はSBUだったという情報が、ユーシェンコ政権の始動とともに表面化したのである。 昨年十一月二十一日の大統領選決選投票後、「選挙は無効」と主張する野党支持者十万人以上が最高会議などがある首都キエフ中心部を埋めた。クチマ大統領さえ自分のオフィスに近づけないほどのマヒ状態に陥った。

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