西武グループ支配権をめぐる三つ巴の暗闘

執筆者:杜耕次2005年5月号

義明の保釈から一週間後、改革委員会は解散した。ぽっかり生じた「権力の空白」をめぐる暗闘は、再建の行方を大きく左右する。「いろいろご迷惑をおかけしました。申し訳ありませんでした」 三月二十四日午後五時四十五分ごろ、神奈川県二宮町の邸宅前で車から降り立った前コクド会長、堤義明(七〇)は、報道陣の要請に応じて謝罪の言葉を二度繰り返した。 西武鉄道株をめぐる証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載、インサイダー取引)容疑で東京地検特捜部に逮捕されてから保釈まで三週間。白髪と皺が目に見えて増えたその表情に、昔日のカリスマの面影はなかった。だが、拘置所から出てきた義明は側近たちにきめ細かい事業報告を求め、「事実上、現場復帰している」(プリンスホテル関係者)ともいわれている。 義明の保釈で西武グループの莫大な資産をめぐる三つ巴の「暗闘」が始まっている。主役の一人はもちろん義明本人だ。 逮捕が秒読み段階に入った二月二十五日、義明はコクド社長の大野俊幸(六六)を通じて、西武グループ経営改革委員会が提示した「コクド・西武鉄道一体再生」案を了承する旨の声明を公表した。現在の「義明(コクド株の三六%を保有)コクド(西武鉄道株の七一%を保有)西武鉄道」という支配体系を突き崩し、最終的に合併後の「新西武鉄道」に対する旧コクドの出資比率を「一〇%未満に薄め」(改革委員会関係者)、義明の影響力を排除するのが再生案の最大の狙いだった。

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