「郵政」小泉首相の高笑い

執筆者:2005年5月号

 いやはや、そのしたたかさといったら、歴代の首相でも小泉首相にかなう人物は、そうはいないだろう。政府も、与党も、そしてマスコミも、すべて首相の「想定の範囲内」でしか反応せず、結果として郵政民営化問題は、小泉首相の思うつぼに終わりそうな気配だ。 小泉という政治家の尋常ならざるところは、物事の流れを読み通す能力である。自民党の民営化反対論者を刺激するため、あえて、与党の賛成が得られなくとも政府単独で法案を決定し国会に提出する、というような姿勢をのぞかせる。綿貫民輔前衆院議長を軸とする反対派はこれに猛反発する。そこで「民営化法案を成立させないということは、小泉内閣を不信任したということになる」と衆院解散・総選挙をちらつかせる。 ある種の恫喝戦術だが、それを自らやってのけるところがこれまでのどの首相とも違うところだ。解散なんてできるはずがない、と思いながらも、多くの自民党議員らは、ひょっとして本当にやってしまうかも、と疑心暗鬼になる。郵政民営化の賛否とは別に、自分の選挙を考えると、小泉以上に選挙の顔になりうるリーダーがいないことに気がつくのである。国民の目に映る全体の構図は、守旧派の強い抵抗にもかかわらず、首相は指導力を発揮して、公約を実行しようとしている、となるのだ。

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