いやはや、そのしたたかさといったら、歴代の首相でも小泉首相にかなう人物は、そうはいないだろう。政府も、与党も、そしてマスコミも、すべて首相の「想定の範囲内」でしか反応せず、結果として郵政民営化問題は、小泉首相の思うつぼに終わりそうな気配だ。 小泉という政治家の尋常ならざるところは、物事の流れを読み通す能力である。自民党の民営化反対論者を刺激するため、あえて、与党の賛成が得られなくとも政府単独で法案を決定し国会に提出する、というような姿勢をのぞかせる。綿貫民輔前衆院議長を軸とする反対派はこれに猛反発する。そこで「民営化法案を成立させないということは、小泉内閣を不信任したということになる」と衆院解散・総選挙をちらつかせる。

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