中国「サプライチェーン博」は意外に低調 理由はトランプ政権「技術封鎖」の優先度に?
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第3回中国国際サプライチェーン促進博覧会(CISCE)が7月16日から20日にかけて北京で開催された。中国内外から1200社の企業、団体が出展する大型イベントだ。
注目を集めたのは、米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアンCEO(最高経営責任者)の参加だ。トレードマークの革ジャンではなく、中国伝統衣装で登壇したフアンCEOは冒頭の挨拶を中国語で行い、「これ以上たどたどしい中国語を皆さんに聞かせるのはご迷惑になるので」とのジョークで笑いをとっていた。AI開発用半導体で圧倒的なシェアを持つエヌビディアのトップという地位に加え、親しみやすくユーモラスなフアンCEOのキャラクターもあいまって、その一挙手一投足が注目されるスター的存在となっている。
こうしたファンCEOのショーに注目が集まったものの、本来はCISCEの本質的な面に目を向ける必要があるはずだ。この展示会は2023年に始まったばかり。ジョー・バイデン前米大統領が進めたデカップリング、フレンドショアリングに対抗する意味合いが強い。脱中国のサプライチェーン構築を目指す米国に対し、「グローバルなサプライチェーンの推進者・中国」をアピールするのが狙いだ。
外国企業の出展率を見ると、第1回は26%だったが、第2回は32%、第3回は35%と回を重ねるごとに上昇している。日本からもパナソニックや住友電工が出展した。米企業の出展も多い。米中対立の焦点である半導体とAI(人口知能)のキープレイヤーであるエヌビディアとフアンCEOの参加も、脱中国は困難というメッセージを打ち出す好材料と言える。
ただ、第二次トランプ政権の現在、 CISCEはいかに参加企業を増やしたとしても、目的がぼやける印象も否めない。第二次トランプ政権の対中外交はまだ不透明な部分も多いが、「スモールヤード、ハイフェンス」(限定した先端技術に厳格な輸出管理)をキーワードに半導体やAIなどの重要技術分野で中国の成長を遅らせるバイデン外交に対して、トランプ外交は貿易赤字の改善が主眼で、技術封鎖の優先順位は低い傾向がありそうだからだ。
エヌビディアのAI半導体「H20」が中国への輸出再開を認められたのは、
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