脱中国の時代でも強かな「メイド・イン・深圳」――最新の主力は「ロボットと低空経済」

執筆者:高口康太 2026年1月5日
タグ: 中国
エリア: アジア
電気街の入口にある「低空ロボット展示センター」にはeVTOLがディスプレイされていた[筆者撮影]
労働コストの上昇が災いし、2010年代の深圳は携帯電話からLED製品、ドローン、VRグラスなど主力製品を乗り換えつつも、「メイド・イン・深圳」は次第に優位性を失うように見えた。転機は2020年からのコロナ禍だ。製造拠点として再浮上した背景には、サプライチェーン強靭化が図られる中で深圳の信頼性が評価されたのに加え、生産現場の自動化がコストの制約を弱めたことが考えられる。その強かな対応力はいま、深圳を「ロボットと低空経済」の街に変貌させている。

 気づいたら、深圳がロボットと低空経済の街になっていた。

 中国を代表するイノベーション都市として知られるのが広東省深圳市である。1980年に作られた、新しい街だ。当初は安い労働力を武器に、外国から持ち込まれた原料を組み立てて輸出するという加工貿易の中心地であったが、次第に中国企業がより高度な工程を担うようになっていった。特に、米アップルが委託したフォックスコンや韓国サムスンの携帯電話工場ができたことによって、電子機器産業の一大集積地として発展した。

外資BIG4と棲み分ける中国企業の「協働ロボット」

 パソコン、携帯電話、LED製品、ドローン、VRグラス、暗号通貨のマイニングマシーンなど、深圳の「看板」はめまぐるしく移り変わってきたのだが、今はロボットと低空経済が熱い。世界最大の電気街・華強北を歩いていると、この二つが繰り返しアピールされている。スティーブ・ジョブズを模した人形は「本物そっくりのシリコン・フェイスで、インタラクティブな対話が可能なAIロボット」とのこと。体が動くわけではなく、一般的なAIチャットボットと同じものと思われる。ジョブズAIと会話するだけならスマホやタブレットで十分だが、人型ロボットブームにあやかって体を全部作ってみたということだろう。

人型ロボットブームにあやかった(?)本物そっくりのジョブズAI人形。体は動かない[筆者撮影]

 電気街の通路にはロボットアーム自販機もあった。注文すると、ロボットアームがカフェラテを作ってくれる。コロナ禍前にもロボットアームを使ったカクテルバーなど似たようなものはあったのだが、違いは「大きさ」だ。小さく力が弱い協働ロボットが使われているので、自販機として小型化できている。大きな産業用ロボットは日本のファナックと安川電機、スイスのABB、ドイツのKUKAからなるBIG4がシェアを握っているが、協働ロボットでは中国企業も高いシェアを持つ。

小さなブースの中でロボットアームが飲み物を作ってくれる自販機[筆者撮影]

「空飛ぶくるま」の時代をアピール

 電気街の入口には「低空ロボット展示センター」なるショールームもあった。

 中をのぞくと、「空飛ぶクルマ」と言われるeVTOL(電動垂直離着陸機)が展示されている。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
高口康太(たかぐちこうた) 1976年、千葉県生まれ。ジャーナリスト、千葉大学客員教授。千葉大学人文社会科学研究科博士課程単位取得退学。中国・天津の南開大学に中国国費留学生として留学中から中国関連ニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。中国経済と企業、在日中国人経済を専門に取材、執筆活動を続けている。 著書に『ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界 』(文春新書、共著)、『幸福な監視国家・中国』(NHK出版、共著)、『中国S級B級論』(さくら舎、共著)、『プロトタイプシティ 深圳と世界的イノベーション』(KADOKAWA、共編、大平正芳記念賞特別賞受賞)、『中国「コロナ封じ」の虚実 デジタル監視は14億人を統制できるか』(中公新書ラクレ)、『習近平の中国』(東京大学出版会、共著)など。
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