日本株が1年1カ月ぶりに高値を塗り替えた。トランプ関税騒動、FRB(米連邦準備理事会)議長人事、参院選大敗後の自民党の内紛。笑福亭仁鶴流にいえば「世の中トラブル続き」なのに、世界の株価は「真夏の夜の夢」を謳歌する。日本株もまたそのおすそわけに与っている様子なのだ。
まずはデータを確認しよう。日経平均先物は日本時間9日の夜間取引で4万2390円まで上昇し、4万2290円で取引を終えた。日経平均の現物は終値ベースの最高値は2024年7月11日の4万2224円だったから、9日の先物終値はそれを塗り替えたことになる。週明け後も高値追いが続き、14日の反落を跳ね返し、15日には4万3000円台の最高値に。
企業「減益」でもPERが上昇する理由
24年10月に発足した石破政権の下でようやく最高値を更新したのは、政権への信任か、それとも政権交代の先取りか。市場の動きを過度に政治的に解釈するのは禁物だろう。それにしても、市場を取り巻く積乱雲がわき上がるなかでの最高値更新は、鳥取砂丘の蜃気楼のようでもある。最大の違和感は企業業績とのギャップである。日本経済新聞が8月8日時点で集計した、上場企業の25年4〜6月期の純利益合計は前年同期に比べ12%減った。同期間としての減益は22年以来3年ぶり。
トランプ関税や円高が響き、自動車や鉄鋼などが振るわない。この時点の集計対象企業の52%にあたる約520社が減益・赤字となった。非製造業は1%増益と土俵際で踏みとどまったものの、製造業は26%減益と収益の落ち込みがクッキリ現れた。
最大の減益要因はトランプ関税であり、自動車大手7社の関税影響額は3カ月間で計7800億円。1日当たり85億円あまりの重荷を背負わされたことになる。このトランプ関税については7月22日の日米関税合意で、自動車についても上限15%で決着したはずだった。
ところがドナルド・トランプ大統領が4月3日に発動した25%の自動車関税については、引き下げの時期が未定なのだ。現状では自動車には元々の2.5%に25%が上乗せされた27.5%の関税がかかったまま。15%に引き下げる大統領令が「半年先とか1年先ということはない」と、米国側はいう。だが1日遅れるだけで、日本車7社の利益は計30億円減っていく。
そんな状況で日本株が上がっていくのは何故か。
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