金沢工業大学が示す「教育の理想形」

執筆者:水木楊2005年6月号

 大学はかつての銀行のような構造不況業種になるおそれがある。まず顧客に当たる大学進学志望者数が人口の減少などを背景に下り坂に向かっている。二〇〇四年度の大学・短大の志願者数は、計八十二万八千人と前の年に比べて二万七千人も減った。子供の数の減少が止まる様子はないので、志願者は年を追うごとに減っていく。 顧客が減る一方で、大学側の施設、学生の受け入れ能力が依然大きい。一九九〇年代から二〇〇〇年代にかけ、第二次ベビーブーマーによる進学率上昇を見越し、さらに短大からの衣替えなどで大学の新設ラッシュが発生。全国で二百に近い大学が増え、七百二十六校となった。顧客が減り、設備が大きければ、構造不況が訪れる。私立大学では、定員割れとなっているところが全体で三割に達しているのではないかとさえ言われている。 そんな逆風の中で、毎年志願者数がぐんぐんと増えている私立大学がある。二〇〇二年・四千五百九十一名、〇三年・四千九百十五名、〇四年・七千六百九十四名、そして今年は八千九百八十一名。その増え方は私立大学に吹く逆風を考えると、奇跡的ですらある。 志願者数が増えているだけではない。朝日新聞が毎年発行している『大学ランキング』(全国の大学学長を対象にしたアンケート調査による評価)では、教育分野で今年第一位に輝いた。文部科学省の選ぶ「特色ある大学教育支援プログラム」でも、最も難関といわれた「総合的取り組み」部門で、〇三年には東大、北大、九州大学などに伍し、この大学が名を連ねている。さらに雑誌『ダイヤモンド』が主要企業の人事部長に聞いた「(卒業生が)役に立つ大学」では、〇五年版の「将来性に期待する大学」の部門で立命館に次いで二位。東大、京大、慶応、早稲田を押さえている。

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