安倍首相が24日から29日の日程で、ペルシア湾岸産油国(バーレーン、クウェート、カタール)と東アフリカのジブチを歴訪しているところである。すでに今年の4月30日から5月3日にかけてはサウジアラビア、UAE、トルコを訪問しており、日本の首相が中東・湾岸諸国にここまで頻繁に足を延ばすのは前例のないことだ。

 今回の訪問の意義を見る際のポイントは、(1)エネルギー安全保障・シーレーン安全保障を中心とした戦略的な側面、(2)インフラ受注への売り込みなど経済的な側面、の2つだろう。戦略的な側面で注目されるのがバーレーンとジブチであり、経済面ではクウェートとカタールが主になるだろう。

 中東政治への日本の関与という意味で最も注目されるのが、24日に最初の訪問先として訪れたバーレーンである。バーレーンは石油・天然ガスの産出という意味では下火になっており、エネルギーの供給先、あるいは日本製品・インフラの売り込み先という意味でそれほど重要とはいえない。しかし米海軍第5艦隊の本拠地を擁しており、米国の覇権下でのペルシア湾岸の安全保障を支える重要な拠点である。また、2011年の「アラブの春」では反政府運動の勢いがペルシア湾岸産油国で最も強く、政権が大きく動揺した。2011年3月14日、サウジアラビア国家防衛隊の部隊がバーレーンに進駐し、その助けの下で、バーレーン政府は強硬手段を用いてデモを抑え込んだ。その後も激しい弾圧が続き、政権と社会の亀裂は修復の見通しが立たない。

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