エジプト内相暗殺未遂事件の深刻さ

執筆者:池内恵2013年9月6日

 エジプトのカイロで、9月5日午前10時半ごろに、ムハンマド・イブラーヒーム内相の車列を狙った爆破テロが行われた。内相は無事だったが、現場の映像を見る限り、かなりの破壊力の爆弾を用いており、これまでにエジプトの中心部で行われたテロ攻撃としては最大規模である。エジプトにもついに、爆弾テロが吹き荒れる時代が到来したのだろうか。

シナイ半島に限定されていた大規模テロ

  自動車爆弾による政敵・批判者の殺害(その多くはシリア政府の関与が疑われる)が「お家芸」のようになっているレバノンや、宗派紛争に落ち込んだサダム・フセイン政権崩壊後のイラク、そして内戦の続くシリアなどと比べて、エジプトでは紛争の強度は極めて低く、強力な爆弾を市中で炸裂させるようなテロはほとんどなかった。

 エジプトは1990年代に、ムバーラク政権とイスラーム主義過激派の間の激しい抗争を経験したが、大規模な爆弾はあまり用いられなかった。2000年代以降は、テロは概ねシナイ半島に限定されていた。特に規模が大きかったのは、2005年7月23日(現体制の出発点である、1952年7月23日に起こったナセル中佐率いる自由将校団のクーデタの記念日である)にシャルム・エル・シェイクのホテルや観光スポットを狙った連続爆破事件である。

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