アブハジアに「領土割譲」迫るロシアのDNA

執筆者:名越健郎2013年9月26日

 2008年8月の北京五輪さ中にロシア軍がグルジアに侵攻したグルジア戦争から8月で5周年。ロシアが現在、侵攻直後に独立を承認したグルジアの南オセチア自治州、アブハジア自治共和国との国境交渉に着手しており、アブハジア領の一部併合を狙っていることはあまり知られていない。

 

 アブハジアと南オセチアの独立を承認したのは今のところ、ロシア、ベネズエラ、ニカラグアなど数カ国にすぎず、他の旧ソ連諸国も承認していない。しかし、ロシアは5年前の独立承認後、両地域と友好協力条約を締結。ロシア軍部隊を両地域に駐留させ、事実上の保護領としている。ロシアは3年前からアブハジアと国境画定協議を実施。プーチン大統領は今月、南オセチアとも国境画定交渉を行なうようロシア外務省に指示した。両地域独立の既成事実化を進める狙いがある。

 

 問題は、アブハジアとの国境交渉でロシアは、アブハジア領の一部割譲を要求していることだ。アブハジアの反政府系紙ノーブイ・デンによれば、2011年3月にモスクワで行なわれた第2回国境画定委員会で、アブハジア側は旧ソ連時代からの境界を国境にするよう求めたのに対し、ロシアはアブハジア側にある観光地のリッツァ湖やソチ冬季五輪のスキー競技会場に近いプソウ川周辺地域計160平方キロメートルをロシアに移管するよう求めたという。ただし、ロシア、アブハジア当局は一切この情報を認めていない。

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