長ければ長いほど「妻に都合がいい」離婚裁判

執筆者:藤沢数希2013年9月28日

 これまでに結婚というのは、ある種の毎月分配型の特殊な債券の売買契約である(奥さんは『結婚債券』をお金を払って買うわけではないので、譲渡契約と言ったほうがより適正だろう)、ということが理解できたと思う。しかし、結婚と金融商品の売買契約で大きく違うのは、その契約の手続きにかかる時間だ。

 金融商品の取引は5分もあれば済むのだが、結婚するには男女が出会って、通常は1年以上の交際期間を経て、契約成立となる。離婚とは、この契約の解約条項をめぐる攻防と言えるのだが、これは夫側が高額所得者の場合は、通常は何年もかかるのだ。

 それでは今回からは、この離婚に至るまでの法的なプロセスの概要を説明しよう。

 

 その前に、実際には日本の離婚の約9割が、裁判所を経ない協議離婚である、ということを述べておく必要があろう。どれだけ浮気をして、どれだけ暴力を振るい、酒とギャンブルに散財してしまった夫でも、彼にまともな所得も貯金もなければ、奥さんにも名うての弁護士にも何もできない。文字通りお手上げである。どんな立派な法律があり裁判所があろうと、ない金は取れないのである。実際に、日本の離婚する家庭の9割程度は、夫に大した所得もなく、それゆえに弁護士を雇い、法廷闘争を続ける経済合理性がなく、奥さんは子供を連れて出て行き、「何もいりませんから離婚して下さい」と、飲んだくれの亭主に、ほとんどボランティア精神で奥さんに付き合っている弁護士といっしょに頼み込んで、離婚を成立させるわけである。

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