いなり寿司の記憶

執筆者:六車由実2014年1月3日

「すまいるほーむ」の風景

 静岡県沼津市にある民家を借りたデイサービス、すまいるほーむ。ここが私の仕事場である。すまいるほーむは定員10名の小規模デイサービスで、登録している20名のお年寄りたちが毎日かわるがわるやってきては、入浴や食事、レクリエーションなどのサービスを利用しながら1日をのんびりと過ごしている。年齢は55歳から102歳と幅広く、出身地も北は北海道から南は熊本と全国各地に広がり、もちろん職歴も経験も、また病歴も様々である。認知症の方もいるし、脳梗塞による後遺症で片麻痺になった方もいれば、大腿部の骨折や関節リュウマチにより歩行が困難な方もいる。介護保険の認定を受けた要介護度も要支援1の軽度の方から要介護5の重度の方まで、実に多様な人たちが集まっている場所である。

 そして、利用者さんたちの年齢や生活環境、病歴などが様々であるのと同じくらい、ここで働くスタッフたちも実に個性的な面々が集まっている。訪問介護の事業所で管理者をしてきたベテラン介護士から、自らの経営していたデザイン事務所を閉じて1年前に介護職に転職した58歳の男性、大学で演劇を学んだ末にすまいるほーむに就職した26歳の最年少スタッフ、精神科病棟の看護師や訪問看護師をしてきた子育て世代の看護師たちなど、職歴も経験もそして才能も様々である。そして何を隠そう管理者を務める私も、大学の教員を退職して、心機一転介護の現場で働き始めた転職組のひとりである。

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