中国が設定した防空識別圏(ADIZ)に対して、日米同盟の隊列を揃えて、中国を孤立させるという安倍政権のもくろみは成功しなかったようだ。

 その経緯を綿密に点検すると、一方で中国との協議継続を確認し、他方日米同盟への傷を最小限に抑えた巧みな米外交の広報戦略が見えてくる。米国は、公開の記者会見と、同行の米メディアを対象とし、事実上日本メディアを締め出した「バックグラウンドブリーフィング」を巧みに使い分けて、公開情報(オープンソース・インテリジェンス=OSINT)を提供、日本メディアは事実上「つんぼ桟敷」におかれた形になった。

 この問題で、日米間の離反も狙う中国をはねつけることができなかった安倍外交は深刻な課題を突き付けられた形だ。

 

「撤回」と「飛行計画」で溝

 まず、経緯から振り返る。

 中国が11月23日にADIZ設定を発表した直後、日米両国の反応はそろって強硬だった。日本は「撤回」を要求。ケリー米国務長官は「領空に入る意図のない外国機に対してADIZ手続きを適用することを支持しない」、ヘーゲル国防長官は「尖閣諸島に対する日米安保条約の適用を再確認する」と声明。B52米戦略爆撃機2機が中国ADIZ内を無通告飛行して、中国の無力さを見せつけもした。

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