自民党総裁室の椅子に座る安倍晋三総裁。壁面右端の顔写真が祖父・岸信介氏 (C)時事
自民党総裁室の椅子に座る安倍晋三総裁。壁面右端の顔写真が祖父・岸信介氏 (C)時事

 「名前は核兵器とつけばすべて憲法違反だということは……憲法の解釈論としては正しくないのじゃないか」

 1957年5月7日、参議院予算委員会。安倍晋三現首相の祖父、岸信介首相はそう発言した。

 自衛のための小型核兵器なら違憲ではない――そう宣言した発言だった。「核武装する気か」と世論は疑った。だがその8日後、岸首相は参院本会議で「核兵器を日本で持とうという考えは、私は毛頭持っておりません」と発言をトーンダウンさせて沈静化に努め、論議はそれ以上沸騰しなかった。

 実はその裏で、米情報機関は精力的に情報を収集。岸政権が「ひそかに核兵器の検討をしている」ことを示す情報を突き止めて、分析文書をまとめ「大量の証拠がある」と指摘していた。

 米シンクタンク「ノーチラス研究所」が情報の自由公開法(FOIA)に基づき昨年末入手した国務省情報調査局の「インテリジェンス・レポート」がその詳細を記録していた。

 このレポートは米中央情報局(CIA)や軍部の各情報機関、原子力委員会(AEC)なども加わってまとめた1957年6月18日付の米国家情報評価(NIE)に取り入れられた。その結論は「日本が5年以内に核武装に乗り出す可能性は少なくとも五分五分」だった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。