EUが東へ拡大するにつれ、バルカン半島中央の連合国家に注目が集まる。それにはいくつもの理由が――。[ベオグラード発]欧州委員会は二〇〇五年十一月、旧ユーゴスラビアの構成国だったマケドニアを「EU(欧州連合)加盟候補国」として認めるよう欧州理事会に勧告した。またクロアチアとの間でも加盟交渉がスタートし、旧ユーゴ諸国がEU拡大の焦点になってきた。 そんな中、“EU加盟レース”では大きく出遅れ、しかしそのためにむしろ注目されている国がある。連合国家セルビア・モンテネグロだ。一九九二年にユーゴスラビアが解体した後、連邦共和国を形成した二つの共和国は、大統領だったミロシェビッチがユーゴ紛争の元凶とされ、国際社会の経済制裁を受けたことから経済が瓦解し、辛酸をなめた。しかし、もともとは旧ユーゴの盟主。潜在的な経済力は旧社会主義諸国の中でも断トツとされる。しかも首都ベオグラードは拡大EUを担う交通の要衝に位置する。歴史的、経済的に関係が深いドイツ企業などが、着々と拠点を築き始めている。「EUに最も近いけれどEUではない。これがセルビアのセールスポイントですね」――。まだ三十歳代のセルビア投資・輸出促進省の幹部はいたずらっぽく笑ってみせた。〇五年十月にEU加盟の前提となる安定化・連合協定の締結交渉に乗り出したばかりだから、潜在的な加盟候補国とはなったものの、「加盟候補認定」「加盟交渉開始」と実現は早くても十年以上は先の話となる。だが、加盟に時間がかかればかかるほど経済的にはセルビアの利益となる可能性もあるのだ。

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