『レーガンとサッチャー―新自由主義のリーダーシップ―』
『レーガンとサッチャー―新自由主義のリーダーシップ―』

ニコラス・ワプショット/著 
新潮社

 ロナルド・レーガン米大統領とマーガレット・サッチャー英首相は、いかにして権力の座に登りつめ、国際政治の舞台に立ち、どんな風に交流していたのか。ある程度は「知ってるつもり」でいた評者は、本書を読み進めて意外な「発見」があるたびにページに折り目をつけてみたところ、最後は見苦しいほど折り目だらけの本になってしまった。

 2人の最初の出会いは1975年4月9日であった。既に共和党の有力大統領候補者であったレーガン元カリフォルニア州知事は、外交の経験値を稼ぐべく「写真撮影」の機会を求めて欧州を歴訪していた。キャラハン英外相が多忙を理由に表敬会見をパスした日の午後、レーガンは野党・保守党の党首になったばかりのサッチャーと出会う。2人は意気投合し、45分間の予定だった会見は2時間に延びる。保守的な価値観と反共産主義を共有する2人の友情の始まりである。

 

アウトサイダーゆえに

 レーガンとサッチャーにはいくつもの共通点があった。ともに小売業を営む父の影響を強く受け、「市場」を身近に感じる家庭に育った。政治家としての道を歩みながら、俳優出身と女性ということで過小評価された。レーガンは知性を軽く見られ、サッチャーは激しい気性を警戒され、ともにアウトサイダーとして政界を歩む。2人はそれぞれ米国と英国が最悪の状況下でトップの座に就くが、お蔭で過去のしがらみとは無縁に指導力を発揮することができたのである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。