原油高と株高があいまって世界で俄か富豪が誕生している。ロシアや中東、アジアなどはバブル症状を呈している。そんな中、快進撃を遂げているのがプライベート・バンキング(PB)と呼ばれる銀行のサービス。富裕層から資産を預かって運用するビジネスで、スイス系の金融機関が強みを持つ。 中でも最大級の顧客からの預かり資産を誇るのがスイス系金融最大手のUBS。二〇〇五年の決算報告書によれば、ウェルス・マネジメントと呼ばれる富裕層対象の資産運用事業の預かり資産だけで一兆七千三百四十億スイスフラン、日本円にして約百六十兆円に上り、大手銀行としては世界最大級を誇る。CEO(最高経営責任者)のペーター・ウフリ氏は「アジアの富豪の半分はすでにUBSの顧客だ」と豪語している。 UBSは一年で二五%も預かり運用資産を増やしたが、営業努力だけの結果ではない。他社のPB部門を相次いで買収したのだ。〇三年以降だけでも米メリルリンチのドイツでのPB業務やアメリカン・エキスプレス銀行のルクセンブルクのPB業務、英ロイズTSBのフランスの富裕層向け資産運用事業を傘下に収めた。顧客そのものを買収してきたと言っていい。 問題はこうした買収が算盤に合うかどうか。〇四年にドイツで買収した超富裕層向け資産運用助言会社サウアーボーンは、顧客資産が六十億ユーロ(約八千四百億円)を超えるが、UBSは買収に一億二千万ユーロ(約百七十億円)を投じたと推測されている。UBSは一年間の利益の指標となるROE(株主資本利益率)二五%以上を目指しているのは明らかなので、この投資からは年間三千万ユーロ(約四十二億円)の利益を上げる必要がある。つまり税引き前だと顧客資産の一%以上の収入を見込まねばならない。

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