中国を含む全世界の漢族系企業家中で最大・最強・最多資産で知られる香港の「李超人(スーパーマン・リー)」こと李嘉誠ですら、ビジネスの軸足を中国、香港からヨーロッパへ移しつつある。それみたことか、中国経済は“悲鳴”をあげているではないか――。こんな報道がみられるが、奇妙なことに、李に続く漢族系の有力企業家が現れそうにない。もっとも、危機の機は商機の機であると捉える彼らである。難敵の李が去ったなら、中国経済は“買い”と読んでいると考えられないこともない。

 中国経済が、これまでと同じような成長路線を歩めないであろうことは、日本の高度経済成長の時代を振り返るまでもなく、素人にも判る。森羅万象は起承転結の摂理で動く。永遠に右肩上がりなど有りえないことだからだ。だが問題は、中国を、中国経済を、一体化して見ているところにあるのではないか。建国から改革・開放政策に踏み切るまでの30年余、確かに中国は統合され一体化していた。だが、その前提に、強権で国境を閉じていたという現実があったことを忘れてはならない。統合化された中国、一体化した中国市場とは、やはり幻想に過ぎないと考えるべきだろう。

 

壮大な多国間改造計画

 いまから1カ月ほど遡った3月25日、バングラデシュのチッタゴンで、チッタゴン港工商連合会と地元大学の共催により、関係各国・機関から200人超が参加した「BCIM経済回廊合作検討会」なるセミナーが開かれた。BCIM、つまりバングラデシュ・中国・インド・ミャンマー4カ国の経済連携の可能性を探ろうというのだ。

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