遠い国の「原発戦争」

執筆者:徳岡孝夫2014年5月9日

 オバマ大統領の東アジア歴訪中も、ワシントンとNATOはウクライナ危機の温度を徐々に高める対露制裁を追加し続けた。対するウクライナ領内の親露派は折れる気配なく、逆にますます支配圏を広めている。どこかで、どちらかの誰かがミサイルを1発撃てば、第3次世界大戦(キエフ放送は、すでにその言葉を使ってプーチン露大統領を非難している)が始まりそうな気配である。

 今年はサラエボ街頭で発射された1発の銃弾がオーストリア皇太子を斃してから100年に当る。悲観的な人は「人類滅亡前の最後の世紀が始まった」と言っているらしい。

 

 私もどちらかというと悲観派だが、その悲観は毎朝の新聞に出るニュースや解説とは少し違う。

 乱暴な仮定だが、私はもしいまプーチン氏が命令を出してロシア軍にウクライナ東部の町を1つか2つ占領させても、少しも驚かない。近所のスーパーに走っていって乾パンを買い占めない。

 何といっても、ウクライナは我が家からはるかに遠いし、危機というものは、そう簡単に地球上を伝播しないものだからである。

 39年前の今ごろ、私はベトナム共和国の最期を看取って羽田に帰って来た。ベトナム人が大挙して国を捨て、小舟に身を託して南シナ海を沖へ逃げる、その途中で船が転覆して死ぬのを見た。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。