背後のメーンバンクやアドバイザーも含めれば、さらに膨らむ登場人物。旅客輸送の改善とは何の関係もない“私鉄再編劇”の内幕は――。「所詮、茶番劇だ」――。阪神電気鉄道株式のTOB(公開買い付け)をめぐり、村上世彰氏ひきいる村上ファンドと阪神電鉄・阪急ホールディングス陣営が対峙する中、一人高みの見物を決め込む人物がいる。阪急の筆頭株主である投資会社、プリヴェチューリッヒ企業再生グループの松村謙三社長だ。 昨年九月の村上ファンドによる阪神電鉄株の大量取得から、今年四月に浮上した阪急・阪神の経営統合構想までの舞台裏を、松村氏抜きで語ることはできない。 村上氏とは、ある大手証券会社の会合で同席して以来の旧知の仲。「レールを持つ不動産会社」である鉄道株のうまみにいちはやく目をつけ、東京ディズニーランドなどの運営会社を傘下に持つ京成電鉄の筆頭株主に躍り出たことで注目された松村氏は、村上氏に鉄道株への投資を指南していたという。このアドバイスを受け、村上氏が最初に手をつけたのが西武鉄道株であり、四六・六五%まで買い進めたのが阪神株だった。 しかし、阪神株をめぐる動きは、つい一カ月前に浮上した経営統合構想で過熱した後、一転して膠着状態に陥っている。水面下では、黒衣の交代に伴って阪神問題は変質していた。「当事者不在の争奪戦」の本質を理解するためには、まず、村上ファンドによる経営支配におびえた当事者の動きから振り返らなければならない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。