『藻谷浩介対談集 しなやかな日本列島のつくりかた』
『藻谷浩介対談集 しなやかな日本列島のつくりかた』

藻谷浩介/著
新潮社

 「正直、日本はもうだめなのではないか」。本書の著者、藻谷浩介氏は、あとがきをこのように書き始めている。おそらくまっとうな感覚を持つ人であれば、いま、〈誰もが〉そう思っているのではないか。もちろん、私もそのうちの1人である。

 私事で恐縮だが、私は朝日新聞の論壇時評委員の仕事を、2011年の4月から3年以上続けている。毎月、山のように論壇誌や週刊誌が送られてくる。私はそれに目を通し、見るべき論文やコラムを取捨選択し、毎月1回開催される委員会で議論する。これが論壇時評委員の仕事である。

 しかしこの3年というもの、「紙」の論壇誌・雑誌上で本当に見るべき論考というのは、ごくごくわずかである。むしろ劣化が本当に酷い。

 震災直後はまだしも良かった。被災地の問題、復興の問題、原発の問題と、日本社会の知的リソースはいっきょに集中し、多くの問題――それは決して3.11が引き起こしたものばかりではなく、むしろ日本社会における「構造的」な問題――が明らかになった。

 しかし時が経つにつれて、「論壇」からは緊張感が薄れ、いまや緩みきった空気が蔓延している。見るべき議論はほとんどない。そもそも「論争」も「説得」も何も成立していない。右は威勢のいいことを言っているだけの「放言」ばかり、左はいつもどおりのワンパターン化した「クリシェ(常套句)」ばかりだ。何も知的に得られるものはない。

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