教師の質、とりわけ学校運営全般をつかさどる校長の質向上に邁進するフィンランド。そこでは、どのような人物が校長に登用され、いかなる「校長研修」が行なわれているのか。「オペッタヤ、オペッタヤ、オペッタヤ(教師、教師、教師)!」を合い言葉に、教師の質を高めることで教育の質をさらに高め、教育現場を活性化しようと腐心するフィンランド。そこでは、一般教師以上に、教師の採用を含む学校運営全般に責任をもつ「校長の質」が重要となる。 いったいどのような人材が校長に登用され、校長たちにはどんな「研修の機会」が与えられているのか、現地で探ってきた。「現実の問題」を解決する研修も 筆者が訪れた中高一貫のポホヨイス・ハーガン総合学校のユッカ・タンスカ校長(男性)は、他校の校長や、校長を目指す教師たちの指導的立場にある。 タンスカ校長の経歴は実にユニークだ。高校卒業後、庭師や大工、刑務所や国防省のガードマン、考古学の発掘調査などの仕事を経験した後、兵役に就いた。その後、考古学への興味関心が高じてヘルシンキ大学に入学。考古学だけでなく、美術史、社会学、政治学、教育学など様々な分野を七年かけて学び、美術史で修士号を取得した。卒業後は、国際的な発掘調査の現場に出て活躍するという選択肢もあったが、「未来を創造してくれる若者たちを育て導くこと」の方に意義を感じて教師の道へ進んだ。

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