欧州連合(EU)が、最先端の研究・技術開発を進める「欧州工科大学(EIT)」の創設に動き始めた。米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)の向こうを張って、EU内で横断的に産学官の人材や知識、ノウハウを結集する試み。キャンパスは置かず、各地の大学や企業の研究機関をネットワークでつなぐ、欧州ならではの新大学となる。 欧州工科大学の創設は三月のEU首脳会議で各国が合意。EUの内閣にあたる欧州委員会が六月までに具体案をまとめる。当初は中核となるキャンパスを設置する案もあったが、最終的にネットワーク型の大学とする方向で決着しつつある。既存の組織を利用して新たな体制を発足させる手法は欧州ではめずらしくない。 欧州委員会が検討中の設立案によれば、欧州工科大学の創設は二〇一〇年。当初予算は二十億ユーロで、EU本体が拠出するほか、加盟国や企業からも資金を募る。環境技術や新エネルギー開発、温暖化対策、IT(情報技術)、バイオを重点的な研究分野とする方針だ。 まず、研究者やスタッフら五十人程度で構成する事務局を新設する。ここが司令塔となって全体の調整や重点分野、研究の方向性などを決め、各国にある大学や研究機関などを有機的に結びつける計画だ。すでにハンガリーやポーランド、チェコが大学事務局誘致に動いている。また携帯電話機最大手のノキア(フィンランド)やマイクロソフト(米)などが新大学への出資に関心を示しているという。

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