ワシントンDCに行ってきた。心臓発作を起こす前に、ブルッキングス研究所開催のイベント「日本のアフリカ政策:援助パラダイムの再考」にパネリストとして招かれていたのだ。だから、リハビリにおいても今回の出張がひとつの目処だった。

 依頼がきたのは、ブルッキングス研究所で日本研究を担当しているミレヤ・ソリスという女性研究員からで、昨年度までJICAワシントン所長を務められていた中澤慶一郎氏がつないでくれた。
 しかしこの話がきたとき、正直かなり驚いたのである。中国のアフリカ政策については世界中で企画がうたれてきたが、日本のアフリカ政策をテーマに掲げたものは、日本国内を除けば聞いたことがない。それをワシントンDCで、しかもブルッキングスがやるというのだ。ソリス氏の言ではまったく初めての企画であるらしい。だから、入院した当初からこれだけはなんとしても行こうと決めていた。医者からもOKをもらった。

 ワシントンDCにはブルッキングス研究所はじめ名だたるシンクタンクが軒を連ねている。みな米政府との関係は親密で、世界中から優秀な人間が集まっている。情報に携わる仕事のなかでは、ある意味檜舞台だ。そのワシントンでここ数年、日本研究のプレゼンスが一貫して低下していて、一方中国研究は隆盛をきわめているらしい、という話は仄聞していた。私たちの研究所がやっているような地味なタイプの地域研究もアメリカではとうに下り坂だから、アジア経済研究所としてもコンタクトが乏しい世界である。それもあって興味をそそられた。

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