ロシアのプーチン大統領がタカ派のウスチノフ検事総長を更迭したことで、クレムリン最強硬派「シロビキ」の影響力低下が始まりそうだ。 シロビキの主要メンバーは、旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身のセチン大統領府副長官、ビクトル・イワノフ大統領補佐官、パトルシェフ連邦保安局(FSB)長官ら。リーダー格のセチンの娘は、FSBの将校でもあるウスチノフの息子と結婚し、縁戚関係にある。国営石油会社ロスネフチの会長も兼ねるセチンは、ウスチノフと組んで石油企業ユコスの解体を進めたことでも知られる。 ウスチノフは、ホドルコフスキー元ユコス社長の逮捕や改革派のカシヤノフ前首相の住宅不正取得捜査など強引な捜査を指揮し、社会の保守化を進め、民主化後退を陰で操った。「今回の更迭をセチンは直前まで知らなかった」(露コメルサント紙)といわれ、自らもKGB出身で諜報組織を頼りにしてきたプーチン大統領だが、「シロビキ外し」に出た可能性がある。 シロビキは憲法改正による大統領の三選出馬を狙っていただけに、彼らの影響力低下で改憲の可能性は薄れたといえる。大統領は二期で退陣し、後継者を擁立するというシナリオが強まりそうだ。 消息筋によれば、プーチン大統領はウスチノフの住宅不正取得や蓄財を察知し、独自に調査させていたという。腐敗を確認したことで更迭に踏み切ったとの見方が有力だ。

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