日本から東ティモールの首都ディリまでたどり着くには、どうしても一泊二日の旅となる。国際線フライトの都合よい乗り継ぎ便がないためだ。インドネシアのメルパチ航空が、バリ島のデンパサール空港からディリまで、一日一便の定期便を午前十時台に飛ばしている。この便に乗るには前日夜までにバリ島に到着していなければならない。ホテルで一泊して、ディリまでのフライトは約二時間。眼下にはフロレス島や小スンダ列島のパノラマが広がる。 ようやくたどり着いても、「とにかく何にもない」というのが、ディリ市内の第一印象だ。農業、製造業、流通業、観光業、サービス産業――いずれも成立していない。 東ティモールが独立国になったのは二〇〇二年五月二十日。米国のクリントン前大統領やインドネシアのメガワティ大統領(当時)が駆けつけて、小さな国の独立を祝った。小泉首相はその前に連休を利用して訪問。同年九月には百九十一番目の国連加盟国となったが、その直後から東ティモールは「ニュースバリュー」を失い、新聞やテレビで取り上げられなくなった。独立式典から三カ月後にディリを訪問した時には、外国人相手に開業したホテルは閑古鳥が鳴き、小さな「目抜き通り」からは人影が消えていた。

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