大きな問題、小さな問題

執筆者:名越健郎2006年8月号

 アネクドートの世界で筆者の恩師だった作家・ロシア語通訳の米原万里さんが亡くなられた。米原さんと会う時はいつも緊張した。鋭い感性、辛辣な直言、頭の回転の速さと記憶力で圧倒される上、おかしなことを話すと後で何を書かれるか分からないからだ。 米原さんが話していたロシア式アネクドートの真髄は、「視点を一挙に相手側にずらす」「悲劇も喜劇も紙一重」「木を見てから森を見せる」「権威を笑い飛ばす」だった。 下ネタ用語や罵倒表現を多用する強烈な作風だった。最初で最後の長編小説となった『オリガ・モリソヴナの反語法』では「去勢ブタはメスブタにまたがってから考える」という奇怪な表現を用いた。 米原さんが独特の左翼リベラルの立場から批判していたイラク駐留自衛隊も撤退が決まった。 バグダッドに住むイラク人がサマワの友人に訊ねた。「そっちはどうだい。日本が最新の装備で援助に来てくれたそうじゃないか」「ぴかぴかの蛇口だけ置いて帰られても困るんだよね」 小泉首相「サマワは戦闘地域ではない」 記者「でもロケット弾が飛んできます」 小泉首相「どんなに攻撃されても、自衛隊が応戦しなければ、戦闘にはならない」 現場の自衛隊員「俺たちは去勢ブタか」

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