「中国の視点」から考えるTPP の政治経済学

執筆者:武内宏樹2014年8月18日

 環太平洋経済連携協定(Trans-Pacific Partnership: TPP)の議論をしていると必ず話題になるのが、中国を交渉に含めるかどうかという問題である。この問題は、前回(7月23日付「アベノミクスと日本の『宿題』-続・TPP の政治経済学」http://www.fsight.jp/28148)紹介したTPP に関する日米協会ダラス・フォートワース支部主催のシンポジウムでも話題になった。基調講演のなかでウェンディ・カトラー米国通商代表部代表補は、中国がTPP に高い関心をもっていることに触れ、短期的には米中2国間は包括的投資条約の締結に専心して、TPP は現行の12カ国での交渉妥結を目指しながら、将来的には中国をTPP のメンバーに加えることに含みをもたせた。そこで、TPP をめぐる議論の締めくくりとして、中国の視点から見たこの問題の政治経済学を考えてみたい。

 

3つのシナリオ

 政策論を展開するときは、将来の不確実性を考慮し、実現可能な政策シナリオを複数提示して、それぞれの長所と短所を議論しなければ生産的でない。ただ単に理想論を打って、それを現実と比較しても、不毛な政策論になるだけである。中国は高い関心をもって現在進行中(もしくは停滞中というべきか)のTPP 交渉の行方を見守っているのであるが、そこには将来起こりうる3つのシナリオを見出していると思われる。

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