仮設住宅の集会所では節目ごとに合同慰霊祭が行われている(福島県いわき市)(C)時事
仮設住宅の集会所では節目ごとに合同慰霊祭が行われている(福島県いわき市)(C)時事

 人は死に直面すると様々な思いを抱くだろう。「死への恐怖」、あるいは「無念さ」、「後悔」……。また同様に、親族や友人を不慮の事故や災害などで失った人たちにも様々な思いがあるに違いない。

 今、こうした人たちの“心のケア”を行う「臨床宗教師」が注目されている。

 

宗教や宗派に関係なく

 臨床宗教師誕生のきっかけは、2011年3月11日に発生した東日本大震災だった。被災者の抱える様々な苦しみに対して、僧侶、牧師、神職などが被災者の心のケアを行ったのだ。

 こうした経験を踏まえ、さまざまな信仰を持つ人々の宗教的ニーズに適切にこたえることのできる人材が必要なのではないか、との声が高まった。そこで、被災者の心のケアのために地元の宗教者、医療者、研究者が連携して行なってきた「心の相談室」の活動を踏まえ、地元の宗教界などの支援を受けて、翌12年4月、東北大学に「実践宗教学寄附講座」が開設された。

 ちなみに、「臨床宗教師」とは“公共空間で心のケアを行なうことができる宗教者”を意味しており、英語の「チャップレン(chaplain)」の訳語から発想したという。宮城県仙台市の医療法人「爽秋会」理事長だった岡部健医師(故人)が名付け親だ。

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