9月前半のオバマ大統領のバルト三国首脳との会談、ウェールズでのNATO(北大西洋条約機構)首脳会議は、ウクライナをめぐるロシアとの対立、過激派組織「イスラム国」への対抗という米国が抱える2つの課題について、欧州諸国からの協力を担保したことで、これまでの「撤退モード」から「介入方向」に一歩踏み出す転換点になったと思われる。

 

バルト三国へのメッセージ

 エストニアのようにロシアと国境を接し、ロシア語を話すマイノリティーを抱えている国家にとって、ロシアのクリミア半島併合や、ウクライナの親ロシア派への軍事援助は大きな脅威になっており、オバマ大統領としては、直接、訪問して首脳と面会し、米国およびNATOのコミットメントを与えることが、喫緊の課題だった。

 9月2日付の『ニューヨーク・タイムズ』(電子版)のインタビューに答えて、オバマ政権の前NATO大使で、現在シカゴ・グローバル問題評議会の理事長アイボ・ダールダーは、「オバマ大統領はバルト三国に対して、その防衛はNATO加盟国の防衛という欧州安全保障の中心課題であり、英国の防衛とエストニアの防衛は等しく重要であることを伝えようとしている」と語ったが、まさにこの点が今回のバルト訪問のカギであった。

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