「イスラム国空爆拡大」を支えたNATOでの根回し

執筆者:渡部恒雄 2014年9月17日

 9月前半のオバマ大統領のバルト三国首脳との会談、ウェールズでのNATO(北大西洋条約機構)首脳会議は、ウクライナをめぐるロシアとの対立、過激派組織「イスラム国」への対抗という米国が抱える2つの課題について、欧州諸国からの協力を担保したことで、これまでの「撤退モード」から「介入方向」に一歩踏み出す転換点になったと思われる。

 

バルト三国へのメッセージ

 エストニアのようにロシアと国境を接し、ロシア語を話すマイノリティーを抱えている国家にとって、ロシアのクリミア半島併合や、ウクライナの親ロシア派への軍事援助は大きな脅威になっており、オバマ大統領としては、直接、訪問して首脳と面会し、米国およびNATOのコミットメントを与えることが、喫緊の課題だった。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
渡部恒雄(わたなべつねお) わたなべ・つねお 笹川平和財団上席フェロー。1963年生まれ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師を経て米ニュースクール大学で政治学修士課程修了。1996年より米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、2003年3月より同上級研究員として、日本の政治と政策、日米関係、アジアの安全保障の研究に携わる。2005年に帰国し、三井物産戦略研究所を経て2009年4月より東京財団政策研究ディレクター兼上席研究員。2016年10月に笹川平和財団に転じ、2017年10月より現職。著書に『大国の暴走』(共著)、『「今のアメリカ」がわかる本』、『2021年以後の世界秩序 ー国際情勢を読む20のアングルー』など。最新刊に『防衛外交とは何か: 平時における軍事力の役割』(共著)がある。
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