プーチンに共感示すトランプ派――ウクライナ軍事関与を遠ざけるアメリカ社会の大分裂

執筆者:渡部恒雄 2022年3月3日
エリア: 北米
トランプ氏はプーチン氏のウクライナ侵攻について、メキシコ国境の不法移民対策に応用できるとも発言した (2019年のG20大阪サミット時に開かれた米ロ首脳会談で)(C)AFP=時事
バイデン政権に2008年のジョージアのような対ロ圧力は不可能だろう。世論の過半数が「ウクライナに関与すべきではない」と回答しているのみならず、保守サイドにはロシアへの姿勢で真逆の分裂も起きている。何よりも悩ましいのは、プーチンのマッチョで保守的な独裁者性を、トランプ派が「文化戦争」のシンボル扱いすることだ。

 ロシアのウクライナへの侵攻は、アメリカのジョー・バイデン大統領が、本来は開示しないインテリジェンス情報を先制的に開示して、ロシアと欧州諸国に警告していたにも拘わらず、抑止できなかった。開戦後、やはりアメリカの情報は正確だったいう感想もよく聞かれるが、そうであればこそ、アメリカはロシアの軍事行動に確信がありながらも、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟していないという表向きの理由で軍を送らなかったことになる。やはりアメリカは以前とは大きく変わったと言わざるを得ない。

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
カテゴリ: 政治
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
渡部恒雄(わたなべつねお) わたなべ・つねお 笹川平和財団上席フェロー。1963年生まれ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師を経て米ニュースクール大学で政治学修士課程修了。1996年より米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、2003年3月より同上級研究員として、日本の政治と政策、日米関係、アジアの安全保障の研究に携わる。2005年に帰国し、三井物産戦略研究所を経て2009年4月より東京財団政策研究ディレクター兼上席研究員。2016年10月に笹川平和財団に転じ、2017年10月より現職。著書に『大国の暴走』(共著)、『「今のアメリカ」がわかる本』、『2021年以後の世界秩序 ー国際情勢を読む20のアングルー』など。最新刊に『防衛外交とは何か: 平時における軍事力の役割』(共著)がある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top