突然、降って湧いたかのような印象が強い「イスラム国(IS)」の勃興。実際には、インテリジェンス面からの指摘で、何度かチャンスはあったのだが、オバマ米政権の決断が遅れ、ISの勢力増大を許した。

 実は1年以上前の昨年8月12日付の米紙ワシントン・ポストは既に、当時「イラクとシリアのイスラム国(ISISまたはISIL)」と呼ばれていた現在のISがシリアで急速に勢力を拡大していることを伝えていた。米国が支持する穏健派の反アサド政権武装勢力が影響力を失ったのに代わって、ジャーナリストや人道支援グループのメンバーを誘拐、殺害するなど過激な活動を展開するISが力を付けている、というのだ。しかし、オバマ政権がこの報道に特に関心を示した形跡はなかった。

 最もユニークな機会となったのは今年2月中旬、2日間にわたってシリア対策を討議するため、米同盟国の情報機関トップを集めてワシントンで開かれた「中東スパイマスター戦略会議」だったかもしれない。

 この会議には、米中央情報局(CIA)を中心に、サウジアラビア、トルコ、カタール、ヨルダンなどの情報機関からトップスパイが出席した。これら諸国のスパイマスターが一堂に会すること自体極めて異例で、会合は恐らく壮観だったに違いない。

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