「夏の終わりから秋の初め」に最初の報告、とされていた北朝鮮による拉致被害者再調査。ところが9月に入って北朝鮮側は、調査は「1年程度が目標」と伝えてきた。

 ならば、再調査の現状はどうなっているのか。政府は北朝鮮側の報告を受けるため、代表団を10月中に平壌に派遣することを決めた。拉致被害者家族会はこれに反対していたことから、成果がなければ、安倍政権と外務省は重大な試練に立たされることになった。

 伊原純一アジア大洋州局長を代表とする代表団は果たして、行方不明者も含めた拉致問題の解決に向けて前進できるのかどうか。

 不透明な現在の状況を読み解くために、インテリジェンス的に事態の推移をしっかりと整理しておきたい。

 

日朝極秘接触で暗転

 今回最初に大きい動きがあったのは、今年5月26-28日スウェーデンの首都ストックホルムで行われた外務省局長級協議だった。翌29日、報告を受けて記者会見した菅義偉官房長官は、北朝鮮側が拉致被害者を含むすべての日本人に関する包括的、全面的な調査実施を約束した、と発表した。

 7月1日、北京で局長級協議。拉致再調査に関する最初の結果報告は「夏の終わりから秋の初め」とすることで合意。北朝鮮は拉致再調査に関する特別調査委員会を設置したので、日本は制裁を一部解除した。

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