共に食べる(下)喜びを分かち合う場へ

執筆者:六車由実2014年11月1日

食への強い欲求

 すまいるほーむで働き出して2年になったが、食事は基本的にほとんどの利用者さんが自立して食べているので、特養で経験した一体感を味わえるような食事介助の機会はめっきりと減ってしまった。それが、少しばかり私には寂しく感じられていた。もちろん、すまいるほーむにも、要介護4、5の認定を受けている重度の利用者さんは何人もいて、排泄や入浴などの身体介護は全介助で行っている。しかし食事に関しては、ご飯の上におかずを載せてあげたり、こぼれないようにお椀に手を添えてあげたりするなどの部分的な介助だけで、あとは、みなさん、どうにかこうにかスプーンやフォークを使って自力で食事を摂ることができている。それはある意味すごいことである。

 たとえば、要介護度5の三好一枝さん(仮名)は、手先の関節が硬直していて、指をうまく動かすことが難しい。だから、レクリエーションでの手作業や手先を動かす体操も、痛みを感じてなかなか行うことができない。ところが、食べることが大好きな一枝さんは、食事の時間になると、硬直した指でも器用にスプーンやフォークを支えて持って、ごはんをすくったり、おかずを刺したりして、食べることができる。こぼれそうになれば、左手の指も使って食べ物を支えて、口に運んでいる。その時は、指の関節の痛みは忘れているようである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。