共に食べる(下)喜びを分かち合う場へ

執筆者:六車由実 2014年11月1日
カテゴリ: 社会 政治
エリア: アジア

食への強い欲求

 すまいるほーむで働き出して2年になったが、食事は基本的にほとんどの利用者さんが自立して食べているので、特養で経験した一体感を味わえるような食事介助の機会はめっきりと減ってしまった。それが、少しばかり私には寂しく感じられていた。もちろん、すまいるほーむにも、要介護4、5の認定を受けている重度の利用者さんは何人もいて、排泄や入浴などの身体介護は全介助で行っている。しかし食事に関しては、ご飯の上におかずを載せてあげたり、こぼれないようにお椀に手を添えてあげたりするなどの部分的な介助だけで、あとは、みなさん、どうにかこうにかスプーンやフォークを使って自力で食事を摂ることができている。それはある意味すごいことである。

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執筆者プロフィール
六車由実(むぐるまゆみ) 1970年静岡県生まれ。民俗研究者。デイサービス「すまいるほーむ」管理者・生活相談員。社会福祉士。介護福祉士。2008年に東北芸術工科大学准教授を退職し、静岡県東部地区の特別養護老人ホームの介護職員に転職。2012年10月から現職。「介護民俗学」を提唱し実践する。著書に『神、人を喰う』(第25回サントリー学芸賞受賞)、『驚きの介護民俗学』(第20回旅の文化奨励賞受賞、第2回日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞)。
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